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2008年1月

エルトュールル号

Img_0275 海の食からたまには外れて、ちょっと違う話題に移ってみます。
このブログは水中映像のお話もあるはずなので(笑)
このブログを読んでいただく頃には、多くのメディアが取り上げるニュースシーンで
この串本沖に沈む軍艦の話を聞いたり見たりした方が多いのではないでしょうか?
今現在この発掘引き上げプロジェクトは進行中で、僕も実はこのプロジェクトに初期からかかわっています。
4年ほど前にトルコ海洋考古学研究所所長トゥファン氏が下見に来日、この時にたまたま串本にいたことから、町と観光協会会長からの依頼で一緒に潜ることになりました。
昨年1月に本格的調査目的で世界中から海洋考古学者が串本に集結。
この中には海洋考古学の父といわれる「ジョージ・バス」
クストーの片腕として調査初期からカリプソ号に乗り組んでいた「クロード・デュティ」などの大物も来日していました。
ジョージ・バスのインタビューは月刊ダイバーにて今月のダイバーとして掲載したので
読んでいただいている方もいらっしゃるかもしれません。
また調査開始時の模様も昨年4月号で月刊ダイバーとナショナルジオグラフィックでカラーで掲載しました。

昨年はトルコ調査団の一員として初めから終了までずっとチーム入りしていたのですが、
今年は諸事情から一報道者として報道開放日に一日だけ参加のつもりで彼のホテルを訪れました。
ところが、トゥファン氏と再会するやいなや、「待ってたよ、いつ合流するんだい?」
なんて言う話に・・・
おいおいいきなりかよと思いながら、報道開放日の午後からは発掘チームの記録係っぽいスタンスに置かれることになってしまいました。(トルコチーム入り)
去年は終盤、あるいは夏のメールのやり取りで、僕が撮影した素材の使用方法を巡って彼とはちょっといざこざがありまして、
今年は少し距離を置いたスタートにしたわけですが、自分が撮影したものや、他の放送局が撮影していくものと客観的に見て、やはり合流してくれという話にどうやらなったようで、
まあ、撮影技術を認めていただいたのかな?

去年のようなトラブルを回避するため、僕が撮影したものを学術的に使用する目的でのコピーを渡すという条件で、撮影した映像の各メディアや雑誌社での使用権を全面的にこちらにいただくという話をしっかりと行ない、今日から合流します。

このエルトュールル号とは明治時代に台風に遭遇、串本沖に沈んだトルコの軍艦で、これを当時の紀伊大島住人が総出で救出活動、嵐の中断崖絶壁から乗組員を救出。
このことから現在トルコ イスタンブールと串本は友好都市関係にあり、トルコ記念館が串本にあるのです。

またその後、日本政府がチャーターした日本の軍艦「金剛」でトルコまでおくりとどけました。
当時トルコは旧ロシアの圧政に苦しみ続ける状態でしたが、日露戦争で日本がロシアに勝ったことや、この事件で「日本はすごい国だ!」となったらしく、
トルコには今も親日家が多いようです。

舞台は変わって1985年
イランイラク戦争時、サダム・フセインは48時間以内に上空を飛ぶ航空機はすべて撃墜すると突然声明を出した。慌てて駐留者を持つ各国は自国のチャーター機を飛ばし、
大急ぎで民間人の退去をさせたのですが、日本政府は対応が遅れ、空港に215人の邦人を孤立させていました。タイムリミットまであとわずかという時に
トルコが自国のチャーター機を飛ばし、日本まで送り届けてくれたのです。
日本政府は「なぜトルコが????」となったのですが、
東京の外務省にトルコ大使が公式発表。
「これは1890年のエルトュールル号の借りを返しただけです」
何ともかっこいいじゃないですか!!

この船の主要な遺物を向こう5年間で引き揚げ、保存処理をしてトルコに里帰りさせようというのが今回のプロジェクトです。主導はトルコの海洋考古学研究所なのですが、フランスのマチス財団、アメリカテキサス大学なども絡んでいます。

Img_0265 この引き揚げ作業を映像と写真で記録していくのが僕の仕事。
NHKさんも含めて放送局や新聞社など各メディアも入れない作業風景を克明に記録すべく、寒い北風の吹く樫野の海に今年も潜り続けていくことになりました。
向こう四年はこの季節ここに来ることになりそうですなあ。

順次皆さんに何らかの形でお見せしていけると思います。
とりあえず、今日は悪天候で中止ということで、昨夜串本入りするつもりでしたが、連絡受けてまだ出発していません。そろそろ準備して向かいます。
ではでは・・・
Img_0295

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商業捕鯨再開ってどういうこと?

Kujira01 僕はハンドウイルカという鯨種を好んでは食べません。食用には向き不向きがありますからね
でもミンククジラはあるいはハナゴンドウといったものは食べます。つい最近も四国でイワシクジラ&ミンククジラを食べました。
これは好みの問題であってタイトルにある商業捕鯨には関係ないですが・・・
ここでは、自分で考えるところの、持続可能な水産資源という考え方から書いてみます。

最近取りざたされている沿岸域で生息する鯨類に水銀が蓄積するのは生態系の頂点に向かえば必然的にそうなるのですが、そう仕向けたのは人間なのです。いわゆる環境汚染ですね。
マグロもしかり。マグロの場合は畜養等で与える飼料の問題が多いのですが、蓄積する量は沿岸魚介類なら間違いなく多いようです。
貝類も数値的に蓄積は多いです。これらは無視できないのですが、別の機会に詳しく書くことにします。

イルカ&クジラは最近でこそフレンドリーなイメージで友達っぽい感じで捉えられていると思います。でも彼らが人間と泳ぐようになったのは世界中の海でここ20年ほどのことです。
それまでは全く人間に近づきませんでした。これは人間の接し方が彼らにとって危険じゃなくなっただけで、生態系の中では共棲しているわけでもなく、人間のPETを飼う感覚に近い感情が芽生えたからだと思います。つまり捕って食べる関係じゃなくなったからといえます。

大海原に出てみて大自然の中で泳ぐ彼らを見て、漁師の生活、歴史を見て、太地の生活の中で、浜で解体されるクジラを見ている地元小学生がどんなふうに感じているかに、実際に接してみれば、決して野蛮な行為ではないと思います。

実際にみてみないことにはわからないのですが、イルカ追い込み漁資料映像や番組に踊らされる人が多くなるのが歯がゆいです。
「太地の人はなぜイルカ&クジラを食べるの?」
「野蛮だ」という意見もダイバーの間からよく聞きます。
太地くじらの博物館など、以前は海外からの投書が多かったようですが、最近は日本国内の若い女性からが多いようです。

よくいろんなところで議論されるクジラ問題で引き合いに出されるのが家畜です。
牛や豚など食肉の大半は人間の好みで食べるために生かされています。
パックずめにされている牛や豚の飼料に何が使われているのか?
米国産など事実を知ったら嫌になりますよ。狂牛病疑惑の時に検査のずさんさがなぜ改善されなかったのか。
米国産ショートリブに吉野家がなぜこだわったのか?単純に効率よく安価にできることであったようで、日本向け輸出等の安全面はアメリカ国内消費用と方向性がずいぶん違うみたいですね。
ちなみに吉野家の牛丼並の牛肉は100g61円だそうで、約90gが乗っています。
一杯の牛丼で50円台の原価だそうです。

この肉はアメリカでもあまり消費されない肉質&品質なので安いんですね。アメリカ人が見向きもしない素材。

味が違うからオージービーフはだめだとこだわっていたのは単に値段だけだったのかなと思われます。日本人が大量発注するからこの商品が生まれたのですね。ショートリブ。

またこれらの家畜は屠殺されるまでどういった環境でどういった食材を与えられてきたのでしょう?これを知れば、たぶん家畜って欧米人が作り上げてきた環境悪化の一要因であることがすぐにわかります。

こういった動物はただ人間に食べられるためだけで狭い環境で一生を終え、屠殺されるためだけに生きています。スーパーのパック詰め牛肉を見て、都市部の小学生は、生きていてすぐそばで「モー」と言ってる牛を殺しているとは想像できないでしょう。

前述の太地町に暮らす人たちのほとんどが浜辺で解体するクジラ、イルカを見て育っています。大海原を自由に泳いでいたクジラが目の前で屠殺解体され、食卓に上がっているのだということを小学生でも知っています。
命の尊さは、あるいは何かを食べないと自分たちは生きていけないということをよくわかっているからこそ、鯨供養という祭りもあったりします。

大海原を自由に泳ぎ回っている群れの中から間引くように弱い個体を捕獲して食べることが野蛮なのでしょうか?人間が本来食べられる飼料となる穀物を大量消費、非常に効率の悪い方法で、我々が本来食べることができる自然の食料を餌として使っていて、その中には保存加工のために添加する非常に危険なものもたくさん含まれています。そういったものを食べさせられて、ただ死ぬために生きているブロイラー化された家畜。

これってかわいそうじゃないのかな?
イルカは一日に飼育されているケースでいうと15kgのアジやサバを食べます。沿岸捕鯨のハナゴンドウで約25kg、小さめのミンククジラで150kgほど食べるみたいです。たった一日でですよ。
今商業捕鯨を再開しようとしている南氷洋のミンクは少なく見積もって80万頭に増えています。この原因も日本とノルウェーがやった捕鯨合戦で大型のシロナガスクジラやナガスクジラが激減したからですが(食性が同じ仲間)、今絶滅に瀕しているシロナガスクジラの数が保護しているにもかかわらず3000頭以上に増えないかは、ミンクが多くなりすぎたからだという説がどうやら本当のようです。
(全世界で3000という数字を切ると、ほぼ絶滅に向かった状態です)
同じ海域で同じ食性、オキアミやニシン、イワシなどを食べているので、彼らの食べられる総数が足りないのです。

我々の食卓でもイワシが捕れなくなって高い魚種になってしまいました。これは飼料として使ったり、安いから廃棄したりもしたからというのは、もちろんですが、海の中の生態系のバランスが崩れているんですね。
海の中の魚種交代は100年サイクルで起こってはいるのですが、今イワシが捕れなくなったのは明らかに人間のせいですし、ミンククジラが膨大に増えすぎたのも人間のせいです(最後は頭数制限だったので、大きなクジラばっかり捕って、小さい種類を保護しすぎた)

僕は持続可能な水産資源と、トータルの生態系回復のためにみて捕鯨推進派です。何でも捕ろうというわけではないのです。増えすぎた特定の魚種や、鯨種をうまく僕達が食べる資源としていかさないといけない時代が来ています。

なぜハナゴンドウの沿岸捕鯨がIWC(国際捕鯨委員会)に認められているか?
これは商業ベースに乗らない小さい鯨種で、数が膨大にいるからです。年間100頭では何のダメージも出ないから。むしろ他の漁獲とのバランスも考えたらもう少し捕ったほうがいいかもしれません。

調査捕鯨と銘打って捕ってるミンククジラは約86万頭が南氷洋だけで棲息することがわかりました。(90年代は30万頭)尾ひれの模様などが変わらないので、目視ではなく、捕獲してメスの割合、年齢、子供の比率を海域ごとにランダムに調べて総数を計っています。
この調査費用が国からもIWC国際捕鯨委員会からも出てないので、捕獲した鯨肉を販売して調査費用に充てているのが現状なのです。86万頭の中から500頭~1000頭の捕獲は全く持続可能な資源量だと思います。
世界には家畜が食べられない人口のほうが圧倒的大多数です。日本や欧米人の一部が喜んで食べているだけではないでしょうか?。食料資源を無駄にする養殖や家畜の在り方を考え直すべき時代です。

食料資源として見たらミンク捕鯨は数量さえ誤らなければ、方法さえ誤らなければ、世界の食糧事情を救うと考えています。高度成長期に僕の体の大部分は安いクジラ肉で作られましたからね。

だいたいからして国が推進してきた調査捕鯨というものがなぜ必要なのか?その説明が国民に全くない。
商業捕鯨の隠れ蓑じゃないの?とみる大多数の日本人が多いのは明らかに政府広報が馬鹿だからです!!
調査捕鯨、商業捕鯨の説明をきちんとやれ!!
日本人を(特に若い世代を)敵に回してどうするんだ!!
調査捕鯨ってネーミングが悪いぞ!!

写真は下が「渚のスローフード」からハナゴンドウ料理のいろいろ。
上がつい最近四国甲浦で食べた調査捕鯨のミンク尾の身、さえずり

Kujira02


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新年

671922520_48縁起を担ぐほうではないのだけれど、こんなのが出るとちょっとうれしくなりますね。

さて、今年は国際サンゴ礁年。
いろんなメディアが取り上げることでしょう。
すでに、某プロバイダー主導でアントニオ猪木さんや田中律子さんを担ぎ出してサンゴを植えようというイベントめいた動きも出ています。

でもサンゴを植えるって?
サンゴはすでに多くの方々がご存じのとおり、サンゴ虫という動物が海水中に豊富にある炭酸カルシュームで骨格を作り、そこ褐虫藻という珪藻類を住まわせ、主食がこの褐虫藻から溢れるような栄養分、そして自分のポリプ(触手)を使って流れてくるプランクトン類を捕食している動物です。
サンゴが広がって群生し、ずっとその場所で定着して何千年もかかって地形までも形成していくとこれがサンゴ礁。
しかしながら、大規模な群落が一時的な環境の変化から出来上がってもこれはサンゴ礁とは呼びません。これは、サンゴ群落と呼ばれることが多いのです。

以前にも書きましたが、サンゴ群落は環境が整えば驚くほど速いスピードで広がります。
サンゴは動物ゆえ、産卵という行動をとるため、これで生息域を広げるわけですが、これは今生きている環境から新天地を探す目的で行われる行動のようです。
その場所で広がるには、単に横に広がるだけでなく、破片分散といって、時化た時などに(海が荒れた時)折れた破片が周辺に広がり、そこに着床。新たな骨格を作りだして群落を形成していきます。
ほんの10年ぐらい前までは、サンゴは折れたら死んでしまう、折らないように注意しましょうとダイビングインストラクターは言っていました。
でも実はそんなことで死んでしまう生き物ではなかったのです。
彼らは自分たちが暮らしやすい環境だとあっという間に大きく育ちます。
下の写真は串本ダイビングパーク前10番ブイ付近の最近のものですが、ここは一昨年の台風で根こそぎやられ、全くと言っていいほどなくなってしまった場所です。
Sango013
でもわずか2年でまたこんな群落が広がりだしています。
エダサンゴの仲間はこのスギノキミドリイシのように成長が早く、環境さえ整えばあっという間に大群落を作り出します。この環境に目を向けなければ、だめなのです。

沖縄の周辺海域のサンゴたち、特に本島周辺のサンゴたちがなぜ死滅したか?
沖縄を訪れるときに空から見下ろせばわかるのですが、10年前に比べて沖縄はすごい大都会になりました。立ち並ぶビル群、住居の形態や数もびっくりするぐらい変化を遂げています。
サンゴが生息するためには、光合成をするための光の届く透明度の高い水、適度な水温が必要で、生活排水や土木工事による汚濁する排水の流出がなければ、きちんと広がっていくのです。
彼らが暮らせなくなった海域に折れたサンゴをボルト止めや水中ボンドで接着してどうなるのでしょう?この移植という試みは、過去30年間研究者がおこなってきて成功例はほとんど皆無です。成功した例はその海域の環境が変わったからだとも言われています。

ホテルの立ち並ぶ目の前の海にサンゴを移植するということは
汚い泥水のようなところに金魚を放しているのと同じ行動です。
金魚はうれしいのかな?
移植するためにダイバーがたくさん訪れ、海から上がって水をたっぷり使ってシャンプーを使っていたら、本末転倒。
さらに多くの観光客誘致のために大規模なホテル建設を始めたら・・・

去年一昨年と植えた(植物じゃないのでおかしい表現ですが)サンゴがどうなったのか報道はなかなかされません。死にかかったサンゴの上に新たな別の海藻が付着、これを取り除くためにボランティアダイバーが入り、さらには他のブダイなどにかじられないためか駕籠で囲ったりして育てようとしている写真はみました。
結局1年や2年でどうなったのかは報道されませんね。(おそらく死滅)
かたや、2年でこうなったという上の写真。
大事なのは人為的な植物を植えるような行動ではなく、そこに流れ込む人間の生活排水を何とかしないとだめなのです。
琵琶湖の葦や、そこに暮らす魚たちが死滅しかかった際、地域の人たちが洗剤を無リンのものやせっけん主体のものに変えて排水を変えることで復活させたというのも今や忘れ去られたことでしょう。
これは琵琶湖が下流域の京都や大阪の水がめでもあり、飲み水の水質改善をうたったこともうまくいった要因の一つだったのでしょう。

沖縄を訪れる観光客に、滞在中だけでもシャンプーやめて、バイオマス石鹸使いませんかとか、沖縄の各家庭、ホテルの排水浄化設備に寄付してくださいとやったほうが僕はまだ効果が上がるのでは?と思っています。
また自然を楽しむために訪れる場所で、立派なリゾートホテルや人為的にたくさん作られたゴルフ場などが果たして本当に必要なのでしょうか?
確かに足腰の弱いお年寄りが宿泊する場所としてホテルは必要でしょう。そういったホテルは便利な都市部の那覇周辺だけに作るべき。

でも、大自然の中に作るのはもうやめるべきではないでしょうか?
宿泊するのは建築時に大きなダメージを与える大規模なホテルではなく、ペンションじゃどうしていけないんでしょ?そのペンションの浄化設備に基金や補助金が出るようにしたほうがサンゴたちは守られるはずです。
沖縄本島から南西諸島の島々に今はリゾート開発が進んでいます。
空から見ると石垣島や宮古島も沖縄本島と同じになってきてますね。

まずはこの本州最南端串本の例でお正月明けのテレビ番組で現状をお知らせしようと思っています。収録が終わり、オンエアが正式に決まったら、またこちらでお知らせします。見てみてくださいね。


まあ、サンゴの植え付けは、こういった自然環境に目を向けるきっかけを与えるイベントとして広く一般の人に知らせる一つの手段として、わかりやすいのでいいのかもしれませんが、次のアクションがほんとうは必要だと思っています。30人の興味を持った人がプロバイダーに入って、みてくれる場所ができたのなら、その場所の次の有効活用を期待します。

日本の沿岸環境変えなきゃね!!

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